RC-S380の分解と考察

動機

Arduino もとい ESP32 で NFC(Near Field Communication) の規格の 1 つである Felica を読み書きしたくて、ウェブ検索をしました。ArduinoFelica を使用するには、Sony の RC-S620/S で読み込むことができるということがわかりました。しかし、RC-S620/S は下記のように在庫もなし、生産終了予定であるという事実を突きつけられました。RC-S620/S に対して、後継の機種が出ていることはわかるのですが、ビジネス用途のため、現在時点(2023/5/13)で一般人には入手できないようです。

そこで、現在、私が持っている IC カードリーダー RC-S380 でなんとか代用できないかということで、分解して調べてみようと考えました。

RC-S380 とは

RC-S380 とは Sony 製の Felica IC カードリーダーです。

USB でパソコンに接続して使うもので、nfcpy で Felica を読み込めたりします。

ところで、ソニーの後継機種一覧を見てみると、下記のように UART か USB のインターフェースしかありません。

ここで考えたのが、「USB がインターフェースになっている製品は UART による通信をマイコンを通して USB に変換しているだけなのではないか」ということです。つまり、RC-S380 のマイコン部分を取り外せば、UART モジュールとして使用できそうだということです。 実際に分解して、様子を見てみます。

分解してみる

外観になります。

裏面はこのようになっていて、赤枠部分のゴムシートを外すと、ネジが 2 本出てきます。

この 2 本のネジ外し、右側の爪部分に注意して蓋を開けると、下記のように開くことができます。

中には基板が 1 枚入っているのみで、接着シートで表面と接着されています。これは力技で剥がすことができますが、剥がす必要はありません。

基板はこのようになっています。

大きい部品としては、左側に USB のコネクタがついており、上下 2 個の IC が載っています。

上の IC に関しては、このようなものです。

これは STM の F103TBU6 というマイコンになります。

下の IC はこのようなものです。

この IC は NXP の OM5570 というもので、ウェブ検索してもデータシートは入手できませんでした。

しかし、似た製品で、OM5579/PN7150ARD というものがヒットしたおかげで、Plug’n Play NFC Controller であるのではないかと考えられました。

考察

余計なことは考えず、UART なのか考察してみます。 まず、基板のパターンをよくみたところ、F103TBU6 の右側の 9 本のピンのうち、上から 3 ~ 6 本目までが下の IC に直説つながっていることが確認できました。

データシートから F103TBU6 の 36 ピンパッケージのピンの機能をみてみると、下記 2 枚の情報を得ました。

PA13 以外は USART の機能と一致しています。UART で通信している可能性が高まりました。 確信はまだできませんが、この線にはパッドが付いているので、この部分にロジアナを当てれば、解析できそうです。 組み込み開発者目線からして、通信波形は見ておきたいので、この部分にパッドが付いているのは頷けます。

残念ながら、ロジアナは持っているのですが、プローブ固定用のスタンドを持っていないので、考察はここまでにしました。

結論

確証はありませんが、RC-S380 は UART 通信している可能性が高いので、解析して、IC を外して線出しすれば、arduino もとい ESP32 でもできそうです。OM5570 のデータシートがないのでわからないのですが、IC の Enable ピンもあるかもしれないので、そういった部分などももう少し見たほうが良さそうです。

後書き

私はここで力尽きますが、この記事を見てより良い情報を生み出してくれればと思います。 それでは、また。

あと、プローブ固定用スタンドが欲しいです。誰か恵んでください